誰から風邪をうつされたか問題

保育園に行かせてた頃は、子供の熱についていつも神経をとがらせていた。

朝の検温で37.5度以上あったら預けられないわけだけど、平熱が36.7度とかの子供がたとえば37.4度だとすると、もうそれは体調を崩しかけているサインなわけだ。だから、本当は休ませたほうがいい。どうせ行かせても熱が出たという電話が来る確率が高いし、その日は大丈夫でも次の日は熱が上がってしまう。ならばひきはじめに大事をとって休ませたほうがいい…。理想だ。ゆとりのある職場ならばそう考えられるだろうか?

しかし、現実私が働いていた職場はそこまで休みを取りやすかったわけではなくて、「本格的な風邪のひきはじめに休ませれば大事をとれる」という理想どおりにはいかず、「一日預けてみて”様子を見て”(この「様子を見る」というのは保護者と保育士の間でよく交わされるワードではないだろうか)、もし熱が出なければもうけものだ…という気持ちで預けたことが一度や二度ではない。もし次の日に本格的に熱が出ても、そのことを予見して仕事をある程度まとめておいたり、引き継いでおいたりできるし、最悪電話がかかってくるまでに仕事の引継ぎ作業をすることだってできる。病児保育にあらかじめ電話をする段取りをつけることだってできる。


頼れる実家もなく、予約が取れるか取れないかわからない隣町の病児保育に頼るしかない我が家では、子供が体調を崩す兆候が少し見られただけでも、私の脳裏には数多の決断するべき選択肢とその選択肢を選んだ場合の段取りとが瞬時によぎり、ストレスで精神力がゴリゴリ削られるような気持ちになっていた。子供の体調よりも仕事を優先してしまう自分がつらかった。

 

ただ、それは私だけではなく、多くのワーキングマザー(ファザーも?/うちは子供が病気の時の段取りは私が担当だったが)に言えることだろう。皆、多少の鼻水や風邪では預けていたんだと思う。一度など、保育園のクリスマス会の前にノロウイルスが大流行していたことがあり、保育園から「前日夜20時以降に嘔吐下痢があったお子さんは参加しないでください」と通達があったにも関わらず、「深夜に吐いた」「昨日まで下痢していたが登園許可証をもらってきたから大丈夫」という親御さんが複数いたというようなこともあった。私が真剣に悩むのがばからしいくらい、ある意味登園基準にはモラルハザードみたいなことが起こっているのかもしれないと思ったこともある。その当時は常識のない親だと本当に憤っていたが、今では登園させるかさせないかというラインは、価値観だけなく職場環境、経済状況や祖父母の存在など様々な要素が絡んでいて、一概にこうするべきと言えないグレーな事柄だと思うようになった。そこで子供が病気をもらってくることは当然ある。しかし同時に、我が子が周りの子に病気をうつしてしまったことだってあるはずだった。

 

仕事をやめたあと、一番楽になったのはその点だ。子供が体調を崩したときに、誰に謝ることなく、段取りをつけることなく、看病に専念できる。病院に行けばいいだけ。あとはゆっくり寝させればよいだけ。本当に気持ちが楽になって、解放されたと思った。幼稚園に通うようになっても、少し体調を崩す兆候があれば遠慮なく休ませるし、園のほうもそれを推奨しているように思える。しかし、核家族共働き が置かれている状況は本当に厳しいと思う。